Takonosuke’s diary

 editor&writer バラの庭作り、そして釣り。東京ときどき信州在住。

おじさんも使うんだ。このハサミ。

むかし、おばあちゃんが縫い物をするときには、必ず傍らにおいていた糸切りバサミ。なんの変哲もない。ただの無骨な握りバサミだ。

長い帯状の鋼鉄を二つに折り曲げて、先端を巧みに延ばして刃を付けて互い違いに組む。無駄は一切ない。まさに職人ならではのシンプルな美しさを持ったハサミだ。

これをさっと手に取り、掌に握っただけで鋭利な道具になる。糸は「ギュシッ」という音とともに、スパッとなんの引っ掛かりもなく切れる。この潔さ。この瞬間、使い手は大きな快感を覚える。

おばあちゃんの裁縫ハサミ

タコの介は手芸店を見つけると、必ず立ち寄ってハサミを捜す。
ハサミコーナーを見つけるオヤジ。
「なんでおじさんが……」といぶかる女店員。

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掌に包み込むようにして使う握りバサミ



裁縫のおばあちゃんのほかにも、このハサミをずっと愛用しているオヤジたちもいるんですよ、店員さん。

それはヘラブナ釣りをこよなく愛するヘラ師のおじさんたちだ。ヘラ師がこのハサミを使う機会は多い。おもにはハリスやミチイトを切るときに使う。

利き腕の手だけで握って、そのまま糸をスパッ。この間はわずかに2テンポ。
これが西洋バサミだと、とたんに面倒くさくなる。利き腕の反対の手でハサミを持ち、利き腕の親指と人差し指のそれぞれにハサミの輪っかをはめて、ようやく糸を切ることができる。切ったあとも輪っかに絡まる指を反対側の手で外してやっと作業が終わる。ふう、と言いたくなる。

 ドリームで見つけた美鈴

タコの介が見つけた手芸店は「ドリーム」という夢のある名前の店だった。意外にもハサミコーナーが充実していた。ここで見つけたのが「美鈴ハサミ」の握りバサミ。美鈴は和鋏のトップメーカーだ。兵庫県小野市に本社がある。

タコの介が買ったのは「イブシ511」。イブシとは防錆加工をしているということだ。値段は950円。これはラインナップのなかでは中級クラス。

特級クラスのになると「美鈴手研501」。価格は3,960円。最高の刃物鋼(安来鋼白紙1号)と軟鉄の複合材を使用した本手打鍛造品で、伝統技術により1丁1丁手造りで鍛え上げた最高級品。表面は綺麗なミガキ仕上げとなっている。

ああ、欲しいッ!

ということで、タコの介は「ドリーム」でしばしヘラ師の物欲を満たしたのであった。

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握ってゆくと、2枚の刃は1点で合って先端へと移動してゆく